うつ病は、最も有病率の高い精神疾患の一つで、15人に1人はうつ病に罹患するともいわれております。特に先進国では社会のストレス化から、うつ病に罹患する患者さんの数は年々増える傾向にあります。うつ病に対する基本的な治療として、休養、認知行動療法などの心理療法、および環境調整を行いますが、それでも改善が見られない患者さんには薬物療法を行います。
しかしながら、50%以上のうつ病患者さんは最初の抗うつ薬治療で寛解には至らないとされています。さらに、約30%は、2種類以上の抗うつ薬を十分量・十分期間の治療を行っても改善が得られない(反応しない)治療抵抗性うつ病と言われています。また、薬物治療への副作用から、治療の継続が難しい治療不耐性うつ病の患者さんもおられます。このような背景から、うつ病に対する新たな副作用の少ない治療法を確立することが強く求められていました。
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法は、2019年に国内で保険適用となった新しいうつ病の治療法です。お薬による症状のコントロールが難しい、治療抵抗性や治療不耐性のうつ病患者さんにとって、新たな治療の選択肢になります。抗うつ薬によって十分な効果が得られない患者さんの3~4割が、安全性の高いrTMS療法によって抗うつ薬と同等の治療効果を示すと考えられています。
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、専用の医療機器を用いて脳の「前頭前野(ぜんとうぜんや)」に磁気刺激を与えます。繰り返し磁気刺激を与えることで、特定の脳の活動を変化させ、うつ病の症状を緩和する治療です。米国をはじめとした海外では、うつ病の治療に広く実施されています。
rTMSはアメリカ、カナダ、ヨーロッパなど海外では2000年頃から行われている治療法です。日本にも機械は輸入されていましたが、長年自費診療という形でしか治療を受けることはできませんでした。2019年6月からは日本でもrTMSが保険適応になりました。保険診療のためには、決められた機器を用いて、決められたやり方で行う必要があります。
高規格の病棟を持つ限られた病院で、トレーニングを受けた精神科専門医が治療に携わるよう定められているため、条件を満たす医療機関は2020年4月現在、約150施設しかありません(保険医療機関では約40施設です)
当院では2023年2月に、山口県で初めて保険診療の適応となる機器(NeuroStar® TMS 治療装置, Neuronetics, Inc.)を導入し、うつ病の患者さんへ新たな治療の選択肢が提案できるようになりました。
18歳以上の中等症うつ病患者です。以下の A)かB)のどちらかを満たす場合にrTMS治療の対象となります。詳しくは主治医にご相談下さい。
※実施には精神科専門の担当医師による診断が必要です。
A) 1剤以上の抗うつ薬の至適用量を十分な期間服用しても、効果が認められなかった方
B) 抗うつ薬による副作用が強く出てしまい、十分な薬物療法が継続できない方
※上記の適応外基準に該当しない場合でも、安全にrTMS療法を受けていただくことが難しいと判断される場合は、適応になりません。
rTMS療法をご希望の方は、まず下関病院の外来受診が必要です。rTMS療法の適応があると判断された場合は、原則入院での治療になります。ベッドの空き状況などから、入院まで少しお待ちいただく場合があります。
反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)によるうつ病治療では、まれに頭痛、刺激部位の疼痛・不快感、けいれん発作などの副作用が見られることがあります。副作用が気になる場合には、主治医にご相談下さい。
rTMS治療には各種健康保険が適応されます。施行回数・入院期間によって費用(自己負担額)は異なりますが、薬物調整を主とした通常の入院に比べると高額になることがあります。その際には、当院では高額療養費制度などの助成を受けることを推奨しております。制度をご利用になることで、定められた医療費の負担上限額を超えることはありません。詳細は当院スタッフまでお問い合わせください。
国立精神神経医療研究センター:最先端のrTMS療法を緑豊かな環境で
医療法人 水の木会
社会福祉法人
水の木会
下関病院附属
地域診療クリニック
萩病院